お風呂のバリアフリー化といっても、具体的に何をすれば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか?
バリアフリー化で失敗しないためには、必要な設備を明確にして、費用を抑えるための介護保険や補助金制度について知ることが大切です!
お風呂のバリアフリー化のポイント、リフォームの費用などを見ていきましょう。
お風呂のバリアフリー化が推奨されている理由
家庭内事故の約3割の発生場所だと言われるお風呂をバリアフリー化することは、安全で快適な入浴につながります。
浴室に潜む危険と併せて、見ていきましょう。
バリアフリー化されていない浴室に潜む危険
高齢者や介護が必要としている方の入浴には、注意すべき危険がたくさんあります。
お風呂は家の中でも、転倒のリスクが高い場所と言えるでしょう。
・浴槽をまらぐ際に転倒
・滑りやすい床で転倒
・イスから立ち上がる時に転倒
・段差でつまずき転倒
浴槽をまたぐ際は、手すりがないと転倒する可能性が高く、ケガにつながるおそれがあります。
濡れて滑りやすい床や出入口の段差なども、転倒のリスクが高いですね。
高齢者の転倒は骨折につながりやすく、その後車イスや寝たきりの生活になるおそれもあります。
この様なトラブルを防ぐためにも、高齢者や介護が必要な方がいる場合は、バリアフリー化を進めていきましょう。
介護する側の視点も重要
浴室のバリアフリー化では、お年寄りや介護が必要な方の視点はもちろんのこと、介護する側の立場に立って考慮することも大切です。
湯舟につかる・立ち上がる際に介助するときは、中腰になったり身体を支えたりと肉体的に負荷がかかりますね。
長期的に負担がかかると、介護する側だけではなく、介護される側のケガに繋がることもあるでしょう。
滑りにくい床や『またぎやすい浴槽』への変更、手すりの設置などを施工することで、介護する側の姿勢や動きが楽になります。
介護しやすい設備や、介護に十分なスペースがあるかということも考慮したうえで、バリアフリー化を進めましょう。
バリアフリー箇所の注意点
介護が必要になったことで、浴槽につかることを断念される方もいます。
そんな場合でも、介護の状態に合うように浴室をリフォームすれば、浴槽に入ることも可能になりますよ!
ここからは、バリアフリー化のリフォームで、気を付けるポイントを見ていきましょう。
1.段差の解消
浴室によっては、床下にある排水管の勾配を確保した結果、入口扉部分に段差ができてしまう場合があります。
この様な浴室出入り口の段差は、高齢者にとって転倒のリスクになるでしょう。
高齢者は年齢と共に足が上がりにくくなり、少しの段差でも転倒してしまいます。
段差の解消は、お風呂のリフォームにおける重要なポイントと言えるでしょう。
出入り口の段差を2cm以下にすることで、つまずいて転倒するリスクを下げることができ、出入りもスムーズになります。
2.浴槽の高さ
浴室や浴槽の寸法も、バリアフリー化に大きく関わります。
中でも注目すべき点は、浴槽の高さです。
浴槽は、30〜40cm程度の高さであれば安全でしょう。
一般的な浴槽の深さは60cm程度ですが、お年寄りや体が不自由な方にとってはまたぎづらく、転倒のリスクも高くなります。
バリアフリーの浴槽では膝下の長さと同じくらいが適切とされており、約40㎝程度の高さが推奨されています。
3.手摺
手摺は、立ち座りや移動する時に身体を支えてくれます。
動線に合わせて手すりを設けることで、歩行や動作の補助になり、転倒の防止にもつながるでしょう。
お風呂において、手すりの設置が特に有効な場所は以下の6ヶ所です。
1.浴室への出入り(脱衣所側)
2.浴室への出入り(浴室側)
3.洗い場での移動用
4.洗い場イス立ち座り用
5.浴槽への出入り用
6.浴槽での立ち座り用
見落としがちですが、脱衣所側の扉にも手摺を設置しましょう。
浴室に入ろうとして扉を押した時に、床が濡れていて転倒するのを防いでくれます。
4:滑りにくい床
古い浴室に多いタイルの床は、濡れていると滑りやすく、硬いので転倒した際は大きなケガにつながります。
また冬場は床の表面が冷えるため、ヒートショックを起こす原因にもなります。
転倒やヒートショックを防ぐためにも、次の性能がある床を選びましょう。
・滑りにくい
・クッション性がある
・冷たさを感じにくい
転倒してしまった際に衝撃をやわらげてくれる、クッション性のある床材がおすすめです。
例えばTOTOの『ほっカラリ床』
この商品はクッション性があり、表面には滑りにくい加工を施しています。
また、断熱材が入っているため、床下からの冷気を遮断し、冷たさを感じないようになっていますね。
他にも東リ株式会社の『バスナシリーズ』など、メーカーごとに独自の技術による滑りにくい床を提供しています。
東リ株式会社『バスナシリーズ』
滑りにくい・冷たくないだけでなく、汚れが付きにくい床も出ていますので、各メーカーを比べてみましょう。
5.扉のタイプ、開閉方向
扉は、引き戸や折れ戸など、外から開閉でき、大きく開くタイプのものを選ぶと良いでしょう。
『折れ戸』
『引き戸』
上記2つの扉なら、車いすでも浴室の出入りがスムーズに行えます。
引き戸は開閉に力が必要ないのも特徴で、扉を開ける際に体のバランスを崩して転倒することを防げます。
反対に開き戸は、開閉時にバランスを崩して転倒するおそれがあるので注意が必要です。
『開き戸』
また開き戸の扉は、開いた際に洗い場が狭くなるだけでなく、中に人が倒れている場合に開けることが困難です。
中で何かが起きた場合にもスムーズに開けれる扉を選ぶことも、バリアフリーの観点では大切ですね。
6.浴室暖房機
ヒートショックとは、大きな温度変化により血圧が急激に変動する症状を言います。
暖かいリビングからお風呂への移動時や、冷えた脱衣所から熱い浴槽への入浴は、ヒートショックの原因になりやすいため、注意しなければいけません。
この血圧の乱高下に伴って、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの病気が起こります。
血圧の変動は失神を引き起こす可能性もあり、浴槽内で溺れる危険もあります。
これらの予防には、脱衣所や浴室内を暖かくすることが重要ですね。
対策としては、入浴前に浴室暖房機でお風呂を温めておく、断熱加工されたユニットバスでお風呂が冷えないようにする等が効果的でしょう。
急激な温度差にさらされる場面を減らすことで、ヒートショックの予防につながります。
脱衣所も温めよう
脱衣所も暖かくしておくことで、お風呂との温度差を小さくできるでしょう。
ヒートショックは、高齢者のいる家庭だけでなく、どの家庭でも起こりうることです。
脱衣所にも、ヒーターの取付けをしましょう。
脱衣所を前もって暖めてから脱衣・入浴することで、ヒートショックのリスクを低減させることができるでしょう。
ユニットバスの保温性も確認しよう
TOTOやLIXIL、タカラスタンダードなどから、断熱性能の高いユニットバスが発売されています。
各種メーカーからユニットバスが出ていますが、購入する際は「どの程度の断熱材が入っているのか」をしっかり確認しましょう。
クリナップは全ユニットバスに『浴室まるごと保温』を標準採用。
天井から壁、床の裏側まで、浴室全体を保温材で包み、天井と壁には厚さ25mmの保温材を使用しています。
タカラスタンダード『パーフェクト保温』 では、天井面24mm、壁面16mm、床面15mmの保温剤で囲んでいます。
また保温機能の高い浴槽を導入することで、さらにお風呂を快適に過ごすことができます。
各種メーカーのカタログで保温材の厚みや、保温性能をしっかり確認して選びましょう。
7.昇降設備
浴槽への出入りをサポートしてくれるバスリフトなどの昇降設備があれば、立ち座りに不安がある人でも安心して湯舟につかれます。
バスリフトとは、浴槽に設置できる電動で上下するシートのことです。
バスリフトを活用することで、安全な入浴ができるでしょう。
介助する方の負担も大きく軽減できるので、ユニットバスのリフォームの際には、同時にご検討をお勧めします。
昇降設備の多くは充電式の電源を使用するため、電気工事が不要で、浴槽に置くだけで手軽に導入ができますよ。
その他、歩行ができない方に使用可能なものとして、浴室固定リフトもあります。
浴室固定リフトは、脱衣所から洗い場・浴槽の移動に使用します。
浴室固定リフトがあれば、介護者は座ったままで浴槽に入ることができますよ。
浴室固定リフトの特徴
・操作が簡単、軽く押すだけでスムーズに移動が可能
・アーム・モーターを簡単に取り外せるので、家族が入浴する妨げにならない
バスリフトや浴室固定リフトを購入するには、40~60万円ほど費用が掛かります。
しかし介護保険利用時では、月2000~4000円ほどの負担額でレンタルすることもできるので、使用感を試してから購入を検討するのも良いでしょう。
8.浴室は1.25坪以上が必要
浴室の大きさですが、車椅子の介護者がいる場合は1.25坪以上は必要になってきます。
1坪の大きさでもお風呂で介護する事はできますが、車椅子の大きさが38㎝~42㎝はあるため、車椅子の後ろ側からしか介助ができません。
写真で見てみましょう。
1坪タイプでは、車椅子の横側には20㎝ずつしか空間がないため、横からの介護はできないのが分かります。
今度は、1.25坪タイプで見てみましょう。
1.25坪のサイズなら40㎝の車椅子を入れても、まだ左右に40㎝ずつの空間があるため、車椅子の全方位からの介助ができることになります。
車椅子で入ることを考えると、浴室の大きさは1.25坪以上は必要と言えるでしょう。
9.シャワーキャリー
シャワーキャリーとは、浴室用の車いすです。
お風呂場で自分で立ち上がったり、自力で歩いて脱衣所や浴室にいけない方は、介助者によるシャワー浴が中心になります。
その際に便利なのが、浴室用車いす『シャワーキャリー』です。
シャワーキャリーに座ったままで移動したり、体を洗ったりできるので、転倒のリスクを軽減できます。
足腰が不自由な家族がいる場合は、検討してみましょう。
お風呂のバリアフリー化にかかる費用
上記で紹介したお風呂のバリアフリー化ですが、リフォームにかかる費用の目安です。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
段差解消 | 5〜7万円 |
浴槽交換 | 10〜50万円 |
手すり設置(壁・浴槽内) | 3〜5万円 |
床材張り替え | 4〜15万円 |
浴室扉交換 | 11〜13万円 |
浴室暖房機 | 9〜25万円 |
昇降設備設置(購入) | 30〜60万円 |
バリアフリーにする工事としては、何点かまとめて工事すると思いますので、負担額も大きくなりがちです。
少しでも負担が軽くなるように、次は補助金制度を見ていきましょう。
補助金制度が使える
お風呂リフォームでバリアフリー対策を行う場合は「介護保険」の対象になることがあります。
『要介護や要支援と認定された方がいる住宅』という条件が加わりますが、満たしていれば最大20万円まで負担してもらえるでしょう。
以下が、介護保険で補助金制度を利用するための工事項目です。
・浴室内の手摺取り付け
・入口の段差の解消
・扉を引き戸に交換、または入り口を広くする
・浴室の床を滑りにくい素材にする
・浴室の断熱性を高める工事
補助金は国や地方自治体、介護保険から貰うことができます。
活用できる補助金制度の申請漏れはもったいないので、対象になるものがないかをチェックしてくださいね。
補助金制度を申請する3つの機関
補助金は以下の3つの機関により、もらうことができます。
1.国
国土交通省が行っている『長期優良住宅化リフォーム』が該当します。
高齢化対応におけるバリアフリー化の基準を満たすと、限度額100万円として、工事費用の1/3の補助金を受けることができますよ。
同じく国土交通省の『こどもエコすまい支援事業』でも補助金が出ます。
ただし、こどもエコすまい支援事業では、手摺の設置や段差の解消工事だけでは対象になりません。
必ず行わなければならない工事が決められており、必須工事に合わせて手摺や段差解消を補助工事として申請できます。
必須工事
①窓・ドアの断熱(ガラス交換・内窓設置・外窓交換・ドア交換)
②外壁・屋根・天井・床の断熱
③エコ住宅設備の設置(太陽熱利用システム・節水型トイレ・高断熱浴槽・高効率給湯機・節湯水栓)
必須工事の補助額は、高断熱浴槽で27000円、浴室乾燥機で21000円となっています。
補助工事の補助額は、以下になります。
補助額
・手摺 5000円
・段差解消 6000円
ただし手摺は、1本付けしても、10本付けても同じ5,000円しか貰えません。
多く取付けしたから補助金が多く貰えるわけではないので、注意が必要です!
また、申請する補助額の合計が5万円未満の工事は、補助の対象になりません。補助額5万円をもらうためには、まとめてリフォームするのが良いでしょう。
例) 高断熱浴槽27000円+浴室乾燥機21000円+手摺5000円=53000円
上記のリフォームなら、補助額を53000円もらうことができますよ。
補助金の予算に達したらもらえない
こどもエコすまい支援事業の補助金限度額は、令和5年度で1700億円と決まっており、7月末時点で予算額の75%に達しています。
限度額に達成すると補助金を受けれないため、申請は早めにするようにしましょう。
また『こどもエコすまい支援事業』は国の補助金制度であるため、原則として国が実施している他の補助金制度は併用できません。
自治体単位で実施している場合には併用可能ですが、その補助金に国費が充当されている場合は併用できないため注意が必要です。
自治体が実施している補助金がある場合は、当該自治体窓口へ併用可能かどうかを尋ねてみましょう。
2.自治体
自治体の補助金制度は、県によっては行っていない場合もあります。
詳しい内容は各自治体のホームページなどで確認できますので、調べてみてください。
各自治体の補助金制度も、国の補助金制度と同様に去年やっていたからといって、今年も行うとは限りません。
また募集の人数や申請金額の限度がある場合は、早い者勝ちとなります。利用するときは、前倒しで計画することが大切です。
たとえば東京都八王子市では、浴槽の取替え工事に「高齢者自立支援住宅改修給付」を実施しています。
また、兵庫県神戸市の「バリアフリー住宅改修補助事業」では、浴室の手すりの取り付け、段差解消などを対象に最大12万円補助しています。
補助金の有無や内容は各市町村で異なるので、お住まいの地域の役所に問い合わせてみてください。
3.介護保険
お風呂のバリアフリー化で、介護保険の補助金がもらえる場合があります。
『要介護や要支援と認定された方がいる住宅』という条件を満たす必要がありますが、最大20万円まで負担してもらえますよ。
施主は工事費の1割を支払うだけで済むため、20万円のリフォーム工事の場合は18万円を負担してもらえて、施主の支払いは2万円となります。
(※所得に応じて工事費の自己負担が2~3割になることもあります)
ただし、補助金が申請者に支払われるのは工事後になります。
業者には工事費を全額支払うことになりますので、リフォーム費用はきちんと用意しなくてはいけませんね。
適用条件
介護保険の補助金を受けるためには、次の条件をクリアしていることが必要です。
適用条件 | ・介護保険の被保険者(40歳以上であること) ・要介護認定で「要支援1~2」又は「要介護1~5」に認定されている ・住宅が被保険者の住所と一致 ・利用者が福祉施設や病院に入っていない |
まだ要支援・要介護認定を受けていない方は、住んでいる市区町村や地域包括センターに、認定が可能かを相談しましょう。
申請方法
注意点として介護保険を利用する場合は、ケアマネージャーを通して申請する必要があります。
実際に申請する際に「住宅改修が必要な理由書」という書類を提出します。
こちらはケアマネジャーや、福祉住環境コーディネーター2級以上の資格を持つ人などでないと作成できません。
事前に相談するようにしましょう。
リフォームの全体像が決まったら、業者を選んで、ケアマネージャー同席のもと工事プランを決定します。
見積もりやプランできたら、工事の前に市区町村の担当窓口で、補助金の申請書類を提出します。
申請は必ず工事開始前に必要なので、間違わないようにしてください。
申請後、『確認済通知書(承認・非承認)』が届いたら、業者と契約しリフォーム工事を始めていきます。
注意したいのは、必ず確認済通知書が届いてから工事を始める点です。
工事を始めてから非承認となったことが判明すると、全額自己負担で支払わなくてはいけません。
必ず『確認済通知書』で、承認を確認してから工事を始めましょう。工事が完了したら再度、申請を行います。
リフォーム前後の状態がわかる写真や領収書、工事費の内訳書や所有者の承諾書など、市区町村で指定されている書類を提出してください。
受理されると、補助金が支給されますよ。
まとめ
今回は、お風呂のバリアフリー化おける注意点や費用・補助金制度について見てきました。
現在介護が必要な方がいない場合でも、将来必要になってくる場合もあるでしょう。
お風呂のリフォームの際は、安全に入れる環境を整えて、疲れを癒せる場にしたいですね!
1.段差の解消
2.浴槽の高さ
3.手摺
4.滑りにくい床
5.扉のタイプ、開閉方向
6.浴室暖房機
7.昇降設備
8.浴室は1.25以上が必要
9.シャワーキャリー
補助金は、国・自治体・介護保険から受けることができる。
ただし予算の上限に達した場合は貰えなくなるので、早めの申請が必要